2015-09-13

木曜日に体調を崩して、そのままずるずると治らないまま休みの終わりを迎える。 去年も一昨年も、同じ時期に心身の不調を日記に記していて毎年同じリズムで暮らしていることがすこし可笑しい。 そのリズムがandanteであればいいのにと思う。実際はprestoと言…

2015-09-06

あたしはときおり、一匹の猫のことを考える。だけどいまでは彼女のいる場所はわからないし、今遠くで暮らす人達の家では必要とされていなかったのかもしれない。 そこには数年前から新しい猫がやってきているし、そこに住む人は減っている。 ゆめを、みた。…

2015-09-01

汀の夜がやがてやってくる。雨とともに、あるいは、色づいた空気とともに。 やがて街を夜が覆い、ざわめきは遠のいていく。波が引いていくような秋の静けさだ。 「どうか何者もこの密やかな夜を侵しませんよう」呟く声はその形をとるまえに霧散して、静けさ…

2015-08-30

失ってから大切にしてしまうことがあるというのは身を持って知っている。 そのことを自覚していれば、失う前よりもう少し、大切にできるだろうか。

2015-08-24

覚えることはあまりに多い。 電話番号、住所、年に一度しか会わない人の顔、親しくない人の好み、仕事の手順、言葉の遣い方、気の遣い方、お酌の仕方に笑顔の作り方。 けれど、それはすぐに捨ててしまえる。そのための屑籠はとっくの昔に用意をしている。 捨…

2015-08-20(鏡を見るのが怖い)

鏡を見るのが怖いのは現実を見るのが怖いから。鏡を見なければ、自分と目が合うこともない。暗い部屋の中には光は差し込まず、瞼を閉じてもそこに光の温度を感じることはない。 震える呼吸は、震える視線は、相対することを拒むのに、震えている自覚が身を責…

2015-08-15

過去のことばかり。 自分のカメラは大学に入学して1年ほど経ったあとにアルバイトをしたお金を使ってドキドキしながら買った。何枚もの1万円札を渡すような買い物をしたのはそれが2回目だった。 本当は、買う必要なんてなかった。高校を卒業するときに父が持…

2015-08-07・08

「変わっていないよ」 笑いながら、泣きたいような思いで気がついたらそう言い返していた。曾祖母だ。90も半ばになっていよいよ寝ている時間が長くなり、ほとんど話せない状態になっている。今回も帰省したという挨拶にその部屋を訪ねた。 ほとんど目も開か…

2015-08-07

名古屋を経由して実家へ。 名古屋は相変わらずの暑さで、地面は灼けていた。喫茶店のおじさまは少しだけこざっぱりとした風貌になり、しかし口の悪さは相変わらずで安心。本を読んでるそばから「これ面白いぞ」とどんどん本を積んでいく。そんな積まれても読…

20150-08-02

大学2年生の時から、大学院を卒業するまでお世話になった方の「卒業式」。 本当は2月に、私(たち)と卒業のはずだったのに、ずるずると長引いてこの夏まで。これでお終いなんてまだ実感が無いけれど。 懐かしい(なんて、2月に会っているのだから、まだ最近…

2015-07-29

何もかもを諦めないし、手放さない。そういうのは、贅沢かな。贅沢なのだろうな。贅沢のためには対価が必要で、何もかもを手放さないための時間と、(精神的、肉体的)苦痛。 それを越えた先のものを夢見る。美しいと思っていたその先が醜いだけの世界だった…

2015-07-25

言葉はいつまでもどこまでも不自由で、思いだけが先に立ってはそのずっと後を遅れてついてくる。ついてきてくれる時はまだいいけれど、ずっと後ろでぽかんと立ち尽くしているときだってある。 だれにもほんとうのきもちなんて言わずに、一息に逝ってしまえた…

2015-07-24

椅子に座って天井を見上げると、おもっていたよりもそれはずっと高かった。部屋の内側からベランダに向けてゆるやかに傾斜がかかっている。 今の部屋で一番気に入っているところはオートロックでもなく、24時間ゴミ出しできることでもなく、この天井だろう。…

2015-07-23

だいじょうぶだよ、かあさん、大きくなったら、ぼくが世界中に連れていってあげるから。そして、母の手をとって踊る。音楽は、もちろん、ワルツだった。くるりと大きく輪をえがいて一回転するたびに、息子はひとつひとつ世界の都市の名を母親にささやくのだ…

2015-07-22

朝から雨。梅雨明け直後の雨はしとしとと。羽が舞うようにふわりと雨粒は舞う。電車はうみねこの声をあげる。 言葉を喪っていく。私は徐々に言葉を忘れ、ついには何も話すことができなくなる。もうすでに人が何を話しているか、理解できなくなっている。わか…

2015-07-20

矢も盾もたまらず、外へと飛び出した。外へ出たかった、というよりも内的に引きこもりたかったから。このままここへいたら狂ってしまうというような予感がしたから。朝だって早く起きることができたから、大原のマリアの心臓に行ってもよかった。会期は今日…

2015-07-16

「嵐が来る前に」 波がうねり、霧のように細かい飛沫が吹き付ける。場違いにもその光景を美しいと思ってしまった。途中、車を止めて荒れる海を目に焼き付ける。 写真にも収めようかと思ったけれど、それはやめた。残しておきたくない感情があるように、残し…

2015-07-12

いつの間にか夏の最中にいた。季節に鈍感になっていきたくなくて、昨日の夜はベランダに出て冷め切らない生ぬるい風を受けていた。暗いと思っていた夜空は明るくて、雲の動きがよく見えた。 大学1年の夏の夜、似たようなことをしていたことを思い出す。その…

2015-07-09

帰り道、電車に揺られながら「太陽が流れだしたような」夕焼けを眺めていた。 地平線のそのむこう、焼き払われた空は幻想的で、遠かった。どうしてこの風景を誰とも共有できないのだろう。すこし、悲しくなった。 ゆっくりとまばたきをする。シャッターを切…

2015-07-08

「どうだ、京都ぐらしは」 唐突に、ショートメールが届く。名古屋にいたとき、よく通っていたお店のマスターだ。 大変です。とても、とても。私の周りの人はいつも苦しんでばかりです。いつその糸が切れてしまうかわからないままで、懸命に生きているひとば…

2015-07-01

何年か前からずっと雪の最中にいるような気がしている。目線を上げてみればそこは真白な雪原で、雪は吹雪いたり、舞ったり、その時どきで表情を変える。 階段の窓から射す光が雪の日のようだった。空虚に響く靴音が雪の日のようだった。雪の日の光は眩い。雪…

2015-06-24

UFOの日。 そういえばずっと前、UFOを見たような気がする。あれは願望が見せた幻だったか、それともたしかにそこにあった現実だったのか、今となっては何一つ定かなことはないけれど。 家族の誰かも、強情にUFOはあるのだと言い張っていた。あるのかな、ある…

2015-06-19

ただただ寄せてくるだけの波の中にいるような一週間と少し。この週末の休みを挟んで、また来週から息をつくことさえままならない毎日が始まってしまう。 この週末につく息は、ふう、というものではなくて、もっと自然な、息継ぎをしていることさえ感じさせな…

2015-06-09

ごくごく小さな声で歌を口ずさみながら手紙を出すために散歩に出かける。逃げ出してしまおうか、とその歌は私をそそのかす。このまま線路沿いを歩き続けていったら、どこか遠くへたどり着くのだろうか。電車は目にも留まらぬ速さで通り過ぎて行く。あの人達…

2015-06-08

先週の金曜日、記憶にもないほど昔に会ったはずの親戚と20数年を数えて再会した。そんな状況だから再会と言う言葉を使うのは適切ではないかもしれないけれど、それでも確かに再開なのだ。少なくとも、彼女にとってはその言葉が正しい。 この歳になって顔も覚…

2015-05-31

夕方、家を出ると外は室内よりも涼しく、見上げれば月が昇っていた。 眩しくて視線を下げると田んぼには歪んだ月が沈んで、風に揺れるその姿をただ眺めていた。 元来、なにか主だった用事があって外に出たわけではない。それくらいの時間は許されるだろう。…

2015-05-28

「彩度が高い空だねー」 2年前、先輩の何気ない言葉が、あの日と似た空を見る度に思い出される。大学の図書館前、学校のカフェで買ったお弁当を片手に歩く道。 研究室に入ったばかりで、身の振り方も、そこで仲良くなる術もわからなかった頃。 「君はうまく…

2015-05-27

いつも終わらない世界の続きとしての今日を過ごす。 地続きの今日も、白湯にミントを浮かせている、そんなことは昨日から小さく変わっている。夏の準備。 もうしばらく、会話らしい会話をしていない。口の開き方を忘れ、それならばいっそ縫い合わせてくれな…

2015-05-25

夜の真ん中で、例えば学校のプールに忍び込んで君と話をしよう。話すことはなんだっていい。今日見た美しい光景について、あなたの好きな絵について、どんな食べ物がすき?これから先、君は何者になりたい?幸せなのはどんな瞬間? 蒼の夜がすべてを隠して、…

2015-05-24

光の尾が線を引いて後ろへ流れゆく。西の空は淡く色づき、街は徐々に夜の蒼さに飲み込まれる。 ふいに、ずいぶんと遠くまで来てしまったと、様々な感情が入り混じった感慨を得る。時間的にも、距離にしても、だ。その感情の中には、後悔も、憧憬も、恐怖も、…