2015-05-21

恙無く、あるいは恙無いふりをして、日常は過ぎてゆく。 一日は短く、一週間は長い。息継ぎの許されない大海を泳ぐことを強要され、エラはまだ持てずにいる。 久しぶりに、そして初めての、お茶のお稽古に向かう。いろいろなことを笑ってごまかして、そのた…

2015-05-12

4月の終わりに母が入院していたという。優しさのあまり薄情なその人はそんなことも伝えずに、今さらそのことを知る私は、どうすればいいのだろうとそんなことさえわからずにいる。 3歳の時から今に至るまで私が身に受けた病と同じ種別の病だという。これは遺…

2015-04-29

カーテンを開けて朝を見る。曇り。まだ時間が早かったからもう一度、とここ最近の暑さで一枚薄くしたベッドに身体を戻す。どこかへ、逃げ出す夢を見たような気がする。よく知っている場所。燃えるような、夕暮れ時の朱。 昨日の帰り道、古書店に寄って暑かっ…

2015−04−27

昨日一昨日と京都ふるどうぐ市へと。古い小学校の校舎へと一歩足を踏み入れると、そこは憧れの空間で、夫々のお店が夫々の好きを売っている。それを、時には異国の香りをこの手に感じながら持ち上げる。それらはおおよそ、ずっしりと重く、それでも時間の重…

2015-4-22

帰り道、細い通りにある古書店へ寄る。こちらに来てからよく訪れているお店だ。不思議と、僕は古本と相性がいいようで、大抵の場合その空間に馴染むことができる。ここもまた、そのひとつだった。オースターも、久生十蘭も、中井英夫も、澁澤龍彦も、梨木香…

2015-04-21

雨、のち晴れ。 昨晩は雨の音を聞きながらベッドに潜っていた。ベッドに潜りながら、しかし雨の中に体を委ねているような感覚だ。やまなければいいのに、なんて怒られてしまいそうな願い事をしながらみた夢は、実はあまりよく覚えていない。ただ重低音のよう…

2015-04-20

雨、ときどき曇り。 決められた時間に起きて、決められた時間に寝るような生活が始まって十数日が過ぎたことになる。 昨日、一昨日と、母と祖母がこちらを訪ねてきた。祖母は「これがきっと最後だから」なんて痩せすぎた体で言う。そんなことないでしょうに…

2014-01-31 21:41

3年前の自分は、果たして自分だったのだろうか。 そんなことを考えていて、薄ら寒い思いをした。 困ったことに、そのことを証明できるものはなにもないのだ。ただ在るのは、あやふやなこの身体だけだ。 3年前の自分は、この場所にいることを予想さえしてい…

2014-01-27 20:59

土曜日の夜には雨が降った。 昨日の日中はどこか春を感じさせる暖かい陽射しと、夜の雨を匂わせる少しやわらかい風が強く吹き付けていた。 いつの間に4月になったのかと部屋にあるカレンダーを確認してしまったほどだ。 中学の頃から使っている万年カレンダ…

2014-01-23 21:04

「十七年近く、生きてきた。物語にはいっぱいあった。世界が崩壊してしまう話。世界が崩壊した後の話。だけどどうして物語って世界が一気に壊れてしまうのかな。今日の後の明日って突然に壊れてしまうのかな。現実にはそんなことはない。現実はもっとひどい…

2014-01-06 23:29

明日も、明後日も続いてゆく。 昨日も、一昨日も確かに既に重ねてきたのだから。 この時期にいつも体調を大きく崩してしまって泣きたくなるけれど、そんなところさえ変わらずで、へへへ、と笑う。仕方がなくて、可笑しくて。 本当は走り出さないと間に合わな…

2013-12-24 06:17

偶然、ほんとうに偶然(だって目覚まし時計をかけ忘れたんだ)、早く目が覚めて、ほんとうに偶然に外へ歩き出す(だって外は寒いのにどうして出る気になれたの?)。 瞬間、呼吸を忘れた。 午前5時過ぎ、月は丁度南の空にでていて、東の空からは夏の星座たち…

2013-12-18 20:51

15日は松本へ。 行く道でみた山々はうっすら雪化粧。頬にはほんのり赤みが差して、 冬の中にある毅然とした美しさを思う。 急に決まった対談で、準備のために1週間ほどしか期間がなくいろいろと不安はあったのだけれど元々その方の著作を拝読していたので思…

2013-12-14 22:42

気がつけば一日、殆ど外に出ることもなく終えてしまった。 朝起きるとその寒さに布団から起き上がることが躊躇われ、それでも えいやっと起きて、土曜朝恒例のお掃除。 動いているうちに体が温まって、あれも、これも、と普段あまり手をつけない場所まで掃除…

2013-12-10 21:45

「私たちのために本当に幸福だつたと最後に言はれたら、その瞬間からその生き残ったものたちはこの世に幸福といふものがあるのだといふことを信づるような気になると見えますね」 堀辰雄の妻、矢野綾子氏の死の直前の言葉と、それを受け取った堀辰雄氏の心情…

2013-11-16 15:53

新幹線がでる数時間前に家を出た。 少し、町を歩いておきたかったから。 この県で一番おおきな駅で降りると、休日にも関わらず 人はまばらで、そのあまりの少なさに不安になったりもするのだけれど これからもどうにかこのままであって欲しいと願う自分がい…

2013-11-13 23:16

ガタン、がたん。 がたん、ガタン。 東北の電車の独特のリズムで揺れる。 この音に揺られると、懐かしさが蘇る。 電車の中で話す人は誰もいない。電車の音だけが響く。 自動改札なんてない、車掌さんが切符を回収する駅で降りて、 形ばかりの駅舎を抜ける。 …

2013-11-12 22:20

「もしもこの世界でやっていけないなら、自分で自分の世界を作ってしまうことよ」 大好きな本の一節。そのお話は、世界でやっていけない少女が自分の世界を見つけるまでのお話。 壊れて、壊されて、それでも自分が語るべき物語を見つけるお話。 随分と長い間…

2013-11-11 22:16

一度結んだ縁は失われることはないけれど、 遠退くことならあるのだろう。 「明後日まで冬の寒さが続くでしょう。」 ぼんやりした頭で聞いたこの言葉は果たして夢の中か、現実か。 早朝にベランダに出てみるとその寒さに身を竦めた。 夜の空気は澄んでいて、…

2013-11-08 17:39

朝目覚めると、何とか動けるほどになっていて、 ああ、今日は実験があったのだ、とよろよろとその身体を動かす。 少し進んではやすんで、少し進んではやすんで そんな歩調で一日を過ごす。 信号待ちのとき、隣りに立っていたご老人がふと屈んだかと思えば 手…

2013-11-08 00:49

早く寝ようとしたのだけれど、 咳が酷くて上手く眠れずにいる。 いつだって眠るのは下手だけれど、こんな時ばかりは少しそれが恨めしくも感じる。 それならば、と思ってPCを立ち上げてみると嬉しい置き手紙にこころが和らいだ。 市販の薬を飲むことができな…

2013-11-07 17:17

何となく、熱があるような気がして少し早めに家へ戻る。 やることの期限は大きくは年単位で定められているので、こういうときに時間の自由がきくのはとても助かる。 熱を測ると案の定微熱だった。 これからまた上がるのだろうか、下がるのだろうか。 そんな…

2013-11-04 18:11

学校の裏手に、 15メートルくらいの高さの塔がある。 もしかしたら25メートルくらいあるかもしれないけれど、つまりはそれくらいだ。 その塔は全体を明るい茶色で塗られていて、表面は波打つように凹凸があって、 それでいて窓がない。 いつか昇ってみたい。…

2013-11-02 22:12

喫茶店がある一帯で秋祭りがあるから、とマスターに誘われて喫茶店の臨時店員をしていた。 なんてことはない、注文を取って、自分で作れるものは作って、作れないものはマスターに放り投げて、運んで、お会計をする。それだけだ。 それ以外の時間はカウンタ…

2013-10-29 21:06

先を見れば果てしない道のりが広がっていて、引き返すことも、先に進むことも、いずれも目眩を起こしてしまいそうな場所に立っている。 それでも、先を想像して、それがずっと続くことを思えるようになった。 それが良いことなのか、当たり前のことなのか、…

2013-10-24 00:13

変わらないものはなくて、 それは町でも同じで。 何年かぶりに以前住んでいた場所を訪れると、住んでいた棟だけでなくその辺り一帯の団地が全て更地になっていた。 100メートルほどの道路は両側を高い白壁に囲まれて、どこか現実離れした光景だった。 今…

2013-10-11 22:35

森に住む動物たちは「にんげんはいいな、そんなに楽しそうに笑うんだもの」、と人が笑う姿をとても嬉しそうに眺めていました。 そんな動物に囲まれた少年は、また、笑います。 森からの帰り道、少年はお父さんにその話をしました。 「みんなね、僕が笑うとこ…

2013-09-26 22:29

あぁ、このまま空が落ちてきたら気持ちが良いだろうな、そんなことを考えてしまうほどに朝の空は淀みない碧で、暮れの空は藍で。ほんとうに空にこの身を沈めてしまえたらと思う。 いつも通学している道には彼岸花が花をつけ、目にも楽しい。 不思議と葉擦れ…

2013-09-21 22:37

数日の間、所用で札幌で過ごしていた。 札幌に行くのは2回目で、初めに訪れたのは幼稚園の頃だった。 一番古い、そして一番鮮明に覚えている家族旅行の記憶かもしれない。 9月の札幌はもう冬の香りがして、そっと心の中で笑っていた。 冬は、一番好きだ。冬…

2013-09-12 20:17

夏に撒いた暑さの種がふと花開いてしまったような一日で、今なお涼しくならない。 季節の振り子はおおよそ対称に振れること無く、気まぐれに大きく揺れてみたり小さく振れてみたり、自分の手の届くところにない。 秋はいつも記憶を手繰る季節だ。この季節を…