2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

2015-05-31

夕方、家を出ると外は室内よりも涼しく、見上げれば月が昇っていた。 眩しくて視線を下げると田んぼには歪んだ月が沈んで、風に揺れるその姿をただ眺めていた。 元来、なにか主だった用事があって外に出たわけではない。それくらいの時間は許されるだろう。…

2015-05-28

「彩度が高い空だねー」 2年前、先輩の何気ない言葉が、あの日と似た空を見る度に思い出される。大学の図書館前、学校のカフェで買ったお弁当を片手に歩く道。 研究室に入ったばかりで、身の振り方も、そこで仲良くなる術もわからなかった頃。 「君はうまく…

2015-05-27

いつも終わらない世界の続きとしての今日を過ごす。 地続きの今日も、白湯にミントを浮かせている、そんなことは昨日から小さく変わっている。夏の準備。 もうしばらく、会話らしい会話をしていない。口の開き方を忘れ、それならばいっそ縫い合わせてくれな…

2015-05-25

夜の真ん中で、例えば学校のプールに忍び込んで君と話をしよう。話すことはなんだっていい。今日見た美しい光景について、あなたの好きな絵について、どんな食べ物がすき?これから先、君は何者になりたい?幸せなのはどんな瞬間? 蒼の夜がすべてを隠して、…

2015-05-24

光の尾が線を引いて後ろへ流れゆく。西の空は淡く色づき、街は徐々に夜の蒼さに飲み込まれる。 ふいに、ずいぶんと遠くまで来てしまったと、様々な感情が入り混じった感慨を得る。時間的にも、距離にしても、だ。その感情の中には、後悔も、憧憬も、恐怖も、…

2015-05-21

恙無く、あるいは恙無いふりをして、日常は過ぎてゆく。 一日は短く、一週間は長い。息継ぎの許されない大海を泳ぐことを強要され、エラはまだ持てずにいる。 久しぶりに、そして初めての、お茶のお稽古に向かう。いろいろなことを笑ってごまかして、そのた…

2015-05-12

4月の終わりに母が入院していたという。優しさのあまり薄情なその人はそんなことも伝えずに、今さらそのことを知る私は、どうすればいいのだろうとそんなことさえわからずにいる。 3歳の時から今に至るまで私が身に受けた病と同じ種別の病だという。これは遺…