2015-08-07

名古屋を経由して実家へ。

名古屋は相変わらずの暑さで、地面は灼けていた。喫茶店のおじさまは少しだけこざっぱりとした風貌になり、しかし口の悪さは相変わらずで安心。本を読んでるそばから「これ面白いぞ」とどんどん本を積んでいく。そんな積まれても読めないって、なんて笑いながら全ての本に中途半端に手を付ける。どの本も私を遠くへ連れて行こうとする。小さな冒険譚ばかりだ。

引っ越す直前に読んでいたケルアックの『ON THE ROAD』をまた途中まで読んでその先を何ヶ月か先の自分へと譲る。「なんか面白い本があったら送れ」と彼が言うから「着払いで」と生返事。

 

飛行機にはもう何十回も乗っている。格安航空のものも含めて、だ。そのフライト全てで、つまり、今回のフライトも含めて、離陸の瞬間はなんでもないような顔をしながら、それでも口を引き結び、肘掛けを握りしめていた。悪天候のせいだろう、途中、機体がよく揺れていた。日本からロシアへと飛んでいた時もこんな風に揺れていたことを思い出す。その時は、たまたま隣に座っていた方も日本人で、「普通こんなに揺れるんですかねえ」と話しかけられたのだった。初めてのフライトだったから「さあ……」としか言えず、けれどもそれをきっかけに幾つかの言葉を交わしたこと、同じ地方の出身だったこと、彼らはスペインへ向かっていたことなど強く記憶に残っている。ロシアの空港では彼らと記念撮影もしたのだった。

今回、となりに座っている人を見るとスマホで一心にソリティアをやっていた。こちらから話しかけられるわけもなく、ただ肘掛けを握りしめる。通路を挟んで横に座る3歳ほどの子供たちはむしろその揺れを楽しんでいるようで、すごいなあと思う。今もだけれど、その頃の私はもっと怖がりだった。

そのうちに西から日が差しはじめ、徐々に暗さを増していく。着陸した時には太陽はすっかり見えなくなっていた。