2013-12-10 21:45

「私たちのために本当に幸福だつたと最後に言はれたら、その瞬間からその生き残ったものたちはこの世に幸福といふものがあるのだといふことを信づるような気になると見えますね」 堀辰雄の妻、矢野綾子氏の死の直前の言葉と、それを受け取った堀辰雄氏の心情。 死にゆくものは、幸せだったことを伝える義務がある。 その近くに居るものはそれを支える義務がある。 残されたものは幸福を探す義務がある。 だってそうでしょう。 去りゆくものは希望を後に残さなければ、残されたものはどうすればいい。 希望を残しても、誰も受け取ってくれなかったら、去りゆくものはどうすればいい。 繋いで信じて、そこに見えないものを視て、それでようやく意味が生まれる。 私は誰にバトンを渡すのだろう。 どこに幸福を見出すのだろう。 バトンを手渡そうとしてきたものに私はちゃんとこの手を差し出していただろうか。 私は、もうしばらく生き残る。 この世に幸福と言うものがあるということを心から信じることができるように なるまで。 そしてそれを受け取ってくれるものたちに手渡すまで。 あなたのために、自分の幸福を伝えること。