2018-08-12

夏という季節から遠ざかっている。 星を見上げても、ここからではあまり見えないし、窓を開けるには暑すぎる。アイスはあまり得意ではないし、手持ち花火は禁止されている。職場までは駅直結で行けてしまうから地上に出る機会もない。 夏、夏というとどうだ…

2018-07-16

列島が暑い暑いと声高に言って、そのとおりまさにうだるような暑さで、少し顔を上げればアスファルトに陽炎が見える。 人の作ったものにたくさん触れた、思いのようなものにもたくさん触れた、ような気がする。こういうときに「触れる」という語彙を使うのは…

2018-06-24

全世界的にUFOの日。 『イリヤの空、UFOの夏』など読みながら、ぼんやりと一日を過ごす。この本を初めて読んだのは確か中学生の時で、その内容の重さに一度読んで、数年は読み返すのが怖くなってしまった本。 2回めに読んだのは確か高校に入ってからで、大学…

2018-06-08

ある夜、生けていた花が枯れた。花の名前はなんと言っただろうか。そんなことさえ忘れてしまった。紫陽花だったかもしれないし、百合だったかもしれない、もしかしたら牡丹かも。 枯れた花をどうしようかと思って、生き生きとしていた頃の花を思い出していた…

2018-5-12(名付けはいつも幸福のために)

名前を呼ばれることが苦手で、だから名前以外で呼んでもらうようにいつだって最初にお願いをする。 どうして苦手なのか、いつから苦手なのかわからない。気がつけば苦手だった。たぶん小学生の時とか、そのあたりから苦手になっていた。本当は、記憶を辿れば…

2018-4-21

先週末くらいに灯台に行く予感がして、その予感を成就させるために灯台に行った。神奈川の端の方へ、ディ・トリップ。ここ最近、うまく呼吸ができなくなっていた。この「呼吸」はもちろん比喩のことで、実際の私は、すこぶる健やかに、すーすーすーすーと今…

2018-4-17

小学生と、中学生の時、私は不登校になりたかった。その手段があることは知っていたけれど、その勇気はなかった。選択肢のなかにそれを入れることができなかったし、それを提案してくれる人もいなかった。自分もまた、自分が置かれた状況を人に伝えることを…

2018-3-27

今年はじめてコートを着ないで外に出かけた。 冬にいる間、永遠に春なんてこないと思っていた。べつに毎日がつらくて、とかそういうわけではなくて、生活から季節が遠ざかってしまって、暖かくなることがその想像がとても遠かった。 それでも、いつの間にか…

2018-2-14

とおく、水平線が光って見えた。瞬いて、瞬いて、そのたびに目を細めた。砂に描いた下手な絵は波が寄せるたびに消えて、それだけのことがどうしてか、面白い。 よく海に行くようになった。山あいの町で育ってきたから、海は遠いものだったけれど、いまはこん…

2018-1-30

お酒なんて、一滴だって飲めやしないのにワインを買った。1度そのワインセラーの前を通り過ぎて、スーパーに行って、わざわざ道を引き返して買ったのだから、衝動買いというよりも強い意思を持って買った、のだと思う。 家に帰ってコルクを開けるのに30分く…

2018-1-18

実用的なことの知識を身についけていく中で、たくさんの大切なことを手放してしまっているような気がして、ここ数日ひどく落ち込んでいた。 当然のように、きっと、そんなことはない。こうやって書くことで少しでもこぼれ落ちるものが減るように一秒一刻を惜…

2017-12-7

バースデーイブ。 夜を超える前に、朝を迎える前にとこの日はいつも日記をつけようとしている。 世界と繋がりたくて、それを自分の力でなんとかしてみたくて、もがいて、もがくだけで終わった年だったように思う。自分がいる場所だけが変わって、弱さや至ら…

2017-11-15

へえ、本を読むのがすきなんですね、ビジネス書とか?なんて聞かれて私は曖昧に笑う。あんまり読まないです、読めないんですと、言ったような気もする。 ここはそういう場所なのだということを思い知ったというか、知っていたことを目の前に突きつけられたよ…

2017-10-11(言葉による存在許容)

タイに行った。タイに行くにあたって「なんでタイ?」と10,000回は聞かれて10,000回は「なんとなく」って答えた。気の利いたこととは言えない。何となくというのは本当で、ほんとうになんとなくなのだ。ずっと昔に私の家族が住んでいたことがあるとか、そう…

2017-8-31

夕暮れ時、空はまだ赤くなくて、白に近いような青だった。涼しい風が吹いていて、建物と建物の間、銭湯の煙突の先には月がでていた。半分と少しの月。夏の終わりの歌をくちずさみながら、歩いてみる。手は空気を指揮するようにゆれる。楽しい方はあっちかな…

2017-8-16

とぎれ、とぎれの、記憶を思い出したいのに、夏の風がひとつ、吹くたびにわすれていってしまうよな、そんな不安にかられる。朝も、夕も、季節も関係なくすすむ時間の中で、覚えている記憶の断片だけをなぞりながら夜を過ごす。指を一つひとつ折りながら、あ…

2017-8-9

上京してよかったなあ、と思ったことがひとつあって 新宿でレイトショーを見て、そうしたらもう終電とかも終わっちゃっていて だから映画を見たふわふわした頭で、ゆっくり30分くらいかけて家まで歩くんです。 それが楽しい。もう本当に、最高に。

2017-8-8

トリエステ、という響きが特別なものになったのは5年ほど前だっただろうか。教育実習に向かう、開けた野の中を走る電車の先頭車両、その運転席に一番近い場所に立って須賀敦子の『トリエステの坂道』を読んでいた。 その頃、私は日本に帰国したばかりで、日…

2017-8-6(携帯電話を置いて外を歩く)

ここ数日、比較的涼しく過ごしやすかったものの昨日くらいからまた夏が盛り返し、かつて訪れたことのある土地では40度近くまで気温が上がったとも聞いた。 夏が嫌いで、動きが鈍くなり、エアコンをつければ体調を崩し、布団に入ろうにもどうにも暑い。外に出…

2017-8-4

何年ものあいだ、ノアには物が、いろんな物が見えた。幻覚が見え、起きているあいだも夢を見た。いまでは、語るに足るようなものが見えるとしても、たいていの人と同じで眠っているあいだに見るだけだが、前は長年、はっきり目ざめているあいだにいろいろ興…

2017-7-27(人間の(あなたの)ことだけを考えていたい)

生きることの才能がほとほと欠如していて、道もうまく歩けなければ、空気を読みすぎては頬の筋肉を痙攣させて、手は震え、そうして夜一人になっては自己嫌悪が募るばかりだ。 「何お話でしょう?」彼女は尋ねた。「運命について」彼女は眉間に小さなしわを寄…

2017-7-13

何になりたいのか、とそう問われて、いくつかの考えが頭の中に浮かんだ。その考えを全部つかまえて、大きな2つの袋に分けたとしたら、わたしはまだ何かになれるのだということと、つくるひとでありたいということの2つにわけられるのだろうと思う。 でもその…

2017-7-6

花火が上がる、ゆめをみた、ような気がする。 それは電車のなかでみた広告だったかもしれない。記憶は曖昧で不確かだ。遠く、音が聞こえる。花が咲いて、遅れて音が届く。 一番に思い出される花火は、横浜にいた時にみた花火で、それはなんでもない団地の隙…

2017-7-3

本当のことはいらないという。本当のことは大抵都合が悪く、誰かの気分を害することになるから、そんなものを表沙汰にするよりかは、本当のことの一部を切り取って貼り付けて、都合のいいことを述べろ、と。 それは、ある意味正しくて、社会のマイナス面を見…

2017-6-15

「あなたはなにかになりたかったのね」そう言われたのは夢の中だったか、それとも現実だったのか、もう覚えていない。どちらでもよかった。夢の中でも、現実の中でも。夢も現実もそこでの実態は曖昧だ。 どこであっても、私は何かではない。 川沿いを歩いた…

2017/4/17

いくつかの意味のあった日付は、それは昔のことで、今となってはその意味を失って日常の中の過ぎていくひとつのいちにちに変わっていく。 そのことを淋しいとは思わないし、ある意味正常なことなのだろうと思う。そうして長い時間をかけて葬送されたそれは、…

2017-02-01

防犯シャッターなんて閉めたくなくて、夜はできるだけずっと外を見ていたい。 じっと、何も動くものはなくて、ただ虚空の一点だけを見つめている時間が好きで、数年前まではよくやっていた。京都にいるときにその時間を失って、そうしていまもそのままだ。 …

2017-01-19

今年の抱負はと聞かれて、そんなの立てたことないんだけどなあ、と困りつつ、まあでも、ああ、そうだなあ、と「目の前に立ちはだかるもの全部倒すこと」だと答えた。 それは、計画的なものではなく、一種衝動のようなものなのだけれど。 私が好き勝手言って…

盲目の一団が、天井を仰いで

盲目の一団が、天井を仰いで、案内役の声に耳を傾ける。果物があしらわれた照明が視線の先にある。彼らが視るとはどういうことなのだろう、とぼんやりと外に目をやりながら、私は聞くともなくその説明を聞く。一つひとつ、丁寧に案内役が目に見えるものを挙…

2016-12-07

バースデーイブ。 誰よりもはやいお祝いは灯台の光。 目まぐるしく状況は移り変わって留まることを許してはくれない。塩一トンの読書もできないままに日々は過ぎて、手を伸ばす先からするりと言葉はこぼれ落ちて、いつかこの手には何もなくなってしまうので…