2016-09-27

「自分の人生が行き詰まってるからって、他人も世界も一緒にすんなよ。巻き添えにはならへんからな」

夕刊紙を読んでいたおっさんには、なんの反応もなかった。

ジャニスが目を開けているのに気づいた。わたしは言った。

「善く生きる、って……」

ジャニスは遮って言った。

「自分で考えろ」

ジャニスは右手で髪をぐしゃぐしゃ掻きながら大きな欠伸をした。茶色い髪の先に鳥の羽がついていた。

「自分で、死にそうになるまで考え続けろ」

柴崎友香『ビリジアン』)