春の速度で伝わる体温

嘘のように暖かかったのは昨日のことで、今日はまた風が冷たい。

 

一つひとつ、お別れを伝えていく日々。毎年のようにこの儀式をやっている気がする。それは自分ではどうしようもない流れによるものであったり、それを後押しする自分の意志がある。

 

ひとつ、別れるたびに握手をして体温を知る。春の空気の中で、その手はなお温かい。冬の空気の中で雪を溶かす。

思ったよりも硬い指。柔らかい指。包み込むように添えられた左手。例えばそこに桜の花びらが舞い降りたとして、こんなに寒いのにそんな想像がまったく可笑しくないような。

 

あなたたちの期待には何も応えることはしないけれど、私は私の選んだ(と思っている)ようにしか動かないけれど、それでもどうか、私の選んだ道のその先に私のことを信頼して、好きだと言ってくれたあなた達がまだ立っていますように。

追いつくことはできなくとも、後ろから叫んでこの声が届くくらいには近づけるように頑張るから。

帰る途中、何度も振り返る。深くお辞儀をする。まだ手に体温が残っている。

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