2015-05-31

夕方、家を出ると外は室内よりも涼しく、見上げれば月が昇っていた。

眩しくて視線を下げると田んぼには歪んだ月が沈んで、風に揺れるその姿をただ眺めていた。

元来、なにか主だった用事があって外に出たわけではない。それくらいの時間は許されるだろう。人生は長い、とは思わない。いつ終わるともわからない。

だから長いスケールで見れば、生き急いでいるような感覚もある。けれども一日一日を切り取ってみれば毎日、このような時間がある。明け方あるいは夕暮れの後、街が一番美しく色を得ていくとき。

欺瞞でもなく、その時間を生きることができてよかったと、ふと思い出す瞬間がある。