2015-4-22

帰り道、細い通りにある古書店へ寄る。こちらに来てからよく訪れているお店だ。不思議と、僕は古本と相性がいいようで、大抵の場合その空間に馴染むことができる。ここもまた、そのひとつだった。オースターも、久生十蘭も、中井英夫も、澁澤龍彦も、梨木香歩も、須賀敦子も、岡崎京子も、そこにはいる。それらを横目に、たまに背表紙に触れながら、狭い店内を店主と話をしながらグルグルとまわる。

言葉の端々から、彼の生き方を汲むことができるだろうかと、懸命に耳を澄ます。生きてきたそれ以上に深い造詣を持つ人々を本当に羨ましいと思う。僕は、あまりにも浅いから。この人たちは、一体いつ、この世界に関する見識を得るのだろうか。いつか、先に立って誰かを案内することはできるのだろうか。できるといいな、できるといい。小さな風景をひとつひとつ重ねて、(できるだけ)忘れてしまわないように、そうして最期に僕も生きる価値があるのだと、いうことができるように。

 

外に出て、ひとつ、呼吸をする。腰掛けの月が、遅い日暮れの空で笑う。それからもう一度、歩き出す。