2013-11-13 23:16

ガタン、がたん。 がたん、ガタン。 東北の電車の独特のリズムで揺れる。 この音に揺られると、懐かしさが蘇る。 電車の中で話す人は誰もいない。電車の音だけが響く。 自動改札なんてない、車掌さんが切符を回収する駅で降りて、 形ばかりの駅舎を抜ける。 息はもう白くて、歯に染みるような冷たい空気があたりを包み込んでいる。 東の空にはオリオンが、南天には檸檬の月が煌々と輝く。 一緒の駅で抜けた人は寒さに顔を顰めながら足早に歩いていく。 そんな背中を見ながら私は重い荷物を背負って、 ゆっくりゆっくり歩く。 息の白さを見ながら、星を見ながら、月を見ながら。 しばらく歩くと辺り一面の田んぼがある。 前にも後ろにも数百メートルの直線。誰もそこを歩く人はいない。 やっぱり私はゆっくりゆっくり歩く。誰もいない道を踏みしめながら。 南を見ると、ぽつぽつと、まばらに木が並んでいる。 月の光に明るく照らされた空に、木々は影絵のように映る。 たまにその近くの道を通る車のテールランプが赤く明滅する。 それを眺めて、ゆっくりゆっくり歩く。 しばらく道を独占して歩くと、通っていた小学校に行き着く。 校庭は薄明るく照らされて、その時ばかりは自分の影がはっきり見える。 身長よりもずっとずっと長いその影は私の数メートル先を行く。 学校を通り過ぎると、もうすぐそこに家がある。 二階の一室に灯りがついている。 生まれ育った土地の話。