2013-09-12 20:17

夏に撒いた暑さの種がふと花開いてしまったような一日で、今なお涼しくならない。 季節の振り子はおおよそ対称に振れること無く、気まぐれに大きく揺れてみたり小さく振れてみたり、自分の手の届くところにない。 秋はいつも記憶を手繰る季節だ。この季節を思い出すときにはいつも鮮やかに染まった葉の色が近くに視える。 今日もまた一つ、奥にしまっていた記憶がひょっこりと顔をだした。 父と、母と、ドライブに行った時の記憶。10年以上前だろう。 当時から景色をひたすら見ているのが好きで、そのときも秋化粧の山々を車の中から眺めていた。 インスタントカメラのシャッターを気ままに押しながら。 枚数が多くないのだから、ちゃんと撮りなさいと言っていたのは母だっただろうか。 どんな会話をしていたのか、どこへ向かっていたのか、あるいは何も話していなかったかもしれないし、どこへだって向かっていなかったかもしれない。 そういう家庭で、そういう子どもだった。 ただ空が水色だったこと、その真下の山は静かに火を灯したような色をしていたこと、そして後ろに流れていく景色だとか、洋楽が流れる車内の空気が嫌いではなかったことだけを覚えている。