2015-08-20(鏡を見るのが怖い)

鏡を見るのが怖いのは現実を見るのが怖いから。鏡を見なければ、自分と目が合うこともない。暗い部屋の中には光は差し込まず、瞼を閉じてもそこに光の温度を感じることはない。 震える呼吸は、震える視線は、相対することを拒むのに、震えている自覚が身を責…

2015-08-15

過去のことばかり。 自分のカメラは大学に入学して1年ほど経ったあとにアルバイトをしたお金を使ってドキドキしながら買った。何枚もの1万円札を渡すような買い物をしたのはそれが2回目だった。 本当は、買う必要なんてなかった。高校を卒業するときに父が持…

2015-08-07・08

「変わっていないよ」 笑いながら、泣きたいような思いで気がついたらそう言い返していた。曾祖母だ。90も半ばになっていよいよ寝ている時間が長くなり、ほとんど話せない状態になっている。今回も帰省したという挨拶にその部屋を訪ねた。 ほとんど目も開か…

2015-08-07

名古屋を経由して実家へ。 名古屋は相変わらずの暑さで、地面は灼けていた。喫茶店のおじさまは少しだけこざっぱりとした風貌になり、しかし口の悪さは相変わらずで安心。本を読んでるそばから「これ面白いぞ」とどんどん本を積んでいく。そんな積まれても読…

20150-08-02

大学2年生の時から、大学院を卒業するまでお世話になった方の「卒業式」。 本当は2月に、私(たち)と卒業のはずだったのに、ずるずると長引いてこの夏まで。これでお終いなんてまだ実感が無いけれど。 懐かしい(なんて、2月に会っているのだから、まだ最近…

2015-07-29

何もかもを諦めないし、手放さない。そういうのは、贅沢かな。贅沢なのだろうな。贅沢のためには対価が必要で、何もかもを手放さないための時間と、(精神的、肉体的)苦痛。 それを越えた先のものを夢見る。美しいと思っていたその先が醜いだけの世界だった…

2015-07-25

言葉はいつまでもどこまでも不自由で、思いだけが先に立ってはそのずっと後を遅れてついてくる。ついてきてくれる時はまだいいけれど、ずっと後ろでぽかんと立ち尽くしているときだってある。 だれにもほんとうのきもちなんて言わずに、一息に逝ってしまえた…

2015-07-24

椅子に座って天井を見上げると、おもっていたよりもそれはずっと高かった。部屋の内側からベランダに向けてゆるやかに傾斜がかかっている。 今の部屋で一番気に入っているところはオートロックでもなく、24時間ゴミ出しできることでもなく、この天井だろう。…

2015-07-23

だいじょうぶだよ、かあさん、大きくなったら、ぼくが世界中に連れていってあげるから。そして、母の手をとって踊る。音楽は、もちろん、ワルツだった。くるりと大きく輪をえがいて一回転するたびに、息子はひとつひとつ世界の都市の名を母親にささやくのだ…

2015-07-22

朝から雨。梅雨明け直後の雨はしとしとと。羽が舞うようにふわりと雨粒は舞う。電車はうみねこの声をあげる。 言葉を喪っていく。私は徐々に言葉を忘れ、ついには何も話すことができなくなる。もうすでに人が何を話しているか、理解できなくなっている。わか…

2015-07-20

矢も盾もたまらず、外へと飛び出した。外へ出たかった、というよりも内的に引きこもりたかったから。このままここへいたら狂ってしまうというような予感がしたから。朝だって早く起きることができたから、大原のマリアの心臓に行ってもよかった。会期は今日…

2015-07-16

「嵐が来る前に」 波がうねり、霧のように細かい飛沫が吹き付ける。場違いにもその光景を美しいと思ってしまった。途中、車を止めて荒れる海を目に焼き付ける。 写真にも収めようかと思ったけれど、それはやめた。残しておきたくない感情があるように、残し…

2015-07-12

いつの間にか夏の最中にいた。季節に鈍感になっていきたくなくて、昨日の夜はベランダに出て冷め切らない生ぬるい風を受けていた。暗いと思っていた夜空は明るくて、雲の動きがよく見えた。 大学1年の夏の夜、似たようなことをしていたことを思い出す。その…

2015-07-09

帰り道、電車に揺られながら「太陽が流れだしたような」夕焼けを眺めていた。 地平線のそのむこう、焼き払われた空は幻想的で、遠かった。どうしてこの風景を誰とも共有できないのだろう。すこし、悲しくなった。 ゆっくりとまばたきをする。シャッターを切…

2015-07-08

「どうだ、京都ぐらしは」 唐突に、ショートメールが届く。名古屋にいたとき、よく通っていたお店のマスターだ。 大変です。とても、とても。私の周りの人はいつも苦しんでばかりです。いつその糸が切れてしまうかわからないままで、懸命に生きているひとば…

2015-07-01

何年か前からずっと雪の最中にいるような気がしている。目線を上げてみればそこは真白な雪原で、雪は吹雪いたり、舞ったり、その時どきで表情を変える。 階段の窓から射す光が雪の日のようだった。空虚に響く靴音が雪の日のようだった。雪の日の光は眩い。雪…

2015-06-24

UFOの日。 そういえばずっと前、UFOを見たような気がする。あれは願望が見せた幻だったか、それともたしかにそこにあった現実だったのか、今となっては何一つ定かなことはないけれど。 家族の誰かも、強情にUFOはあるのだと言い張っていた。あるのかな、ある…

2015-06-19

ただただ寄せてくるだけの波の中にいるような一週間と少し。この週末の休みを挟んで、また来週から息をつくことさえままならない毎日が始まってしまう。 この週末につく息は、ふう、というものではなくて、もっと自然な、息継ぎをしていることさえ感じさせな…

2015-06-09

ごくごく小さな声で歌を口ずさみながら手紙を出すために散歩に出かける。逃げ出してしまおうか、とその歌は私をそそのかす。このまま線路沿いを歩き続けていったら、どこか遠くへたどり着くのだろうか。電車は目にも留まらぬ速さで通り過ぎて行く。あの人達…

2015-06-08

先週の金曜日、記憶にもないほど昔に会ったはずの親戚と20数年を数えて再会した。そんな状況だから再会と言う言葉を使うのは適切ではないかもしれないけれど、それでも確かに再開なのだ。少なくとも、彼女にとってはその言葉が正しい。 この歳になって顔も覚…

2015-05-31

夕方、家を出ると外は室内よりも涼しく、見上げれば月が昇っていた。 眩しくて視線を下げると田んぼには歪んだ月が沈んで、風に揺れるその姿をただ眺めていた。 元来、なにか主だった用事があって外に出たわけではない。それくらいの時間は許されるだろう。…

2015-05-28

「彩度が高い空だねー」 2年前、先輩の何気ない言葉が、あの日と似た空を見る度に思い出される。大学の図書館前、学校のカフェで買ったお弁当を片手に歩く道。 研究室に入ったばかりで、身の振り方も、そこで仲良くなる術もわからなかった頃。 「君はうまく…

2015-05-27

いつも終わらない世界の続きとしての今日を過ごす。 地続きの今日も、白湯にミントを浮かせている、そんなことは昨日から小さく変わっている。夏の準備。 もうしばらく、会話らしい会話をしていない。口の開き方を忘れ、それならばいっそ縫い合わせてくれな…

2015-05-25

夜の真ん中で、例えば学校のプールに忍び込んで君と話をしよう。話すことはなんだっていい。今日見た美しい光景について、あなたの好きな絵について、どんな食べ物がすき?これから先、君は何者になりたい?幸せなのはどんな瞬間? 蒼の夜がすべてを隠して、…

2015-05-24

光の尾が線を引いて後ろへ流れゆく。西の空は淡く色づき、街は徐々に夜の蒼さに飲み込まれる。 ふいに、ずいぶんと遠くまで来てしまったと、様々な感情が入り混じった感慨を得る。時間的にも、距離にしても、だ。その感情の中には、後悔も、憧憬も、恐怖も、…

2015-05-21

恙無く、あるいは恙無いふりをして、日常は過ぎてゆく。 一日は短く、一週間は長い。息継ぎの許されない大海を泳ぐことを強要され、エラはまだ持てずにいる。 久しぶりに、そして初めての、お茶のお稽古に向かう。いろいろなことを笑ってごまかして、そのた…

2015-05-12

4月の終わりに母が入院していたという。優しさのあまり薄情なその人はそんなことも伝えずに、今さらそのことを知る私は、どうすればいいのだろうとそんなことさえわからずにいる。 3歳の時から今に至るまで私が身に受けた病と同じ種別の病だという。これは遺…

2015-04-29

カーテンを開けて朝を見る。曇り。まだ時間が早かったからもう一度、とここ最近の暑さで一枚薄くしたベッドに身体を戻す。どこかへ、逃げ出す夢を見たような気がする。よく知っている場所。燃えるような、夕暮れ時の朱。 昨日の帰り道、古書店に寄って暑かっ…

2015−04−27

昨日一昨日と京都ふるどうぐ市へと。古い小学校の校舎へと一歩足を踏み入れると、そこは憧れの空間で、夫々のお店が夫々の好きを売っている。それを、時には異国の香りをこの手に感じながら持ち上げる。それらはおおよそ、ずっしりと重く、それでも時間の重…

2015-4-22

帰り道、細い通りにある古書店へ寄る。こちらに来てからよく訪れているお店だ。不思議と、僕は古本と相性がいいようで、大抵の場合その空間に馴染むことができる。ここもまた、そのひとつだった。オースターも、久生十蘭も、中井英夫も、澁澤龍彦も、梨木香…

2015-04-21

雨、のち晴れ。 昨晩は雨の音を聞きながらベッドに潜っていた。ベッドに潜りながら、しかし雨の中に体を委ねているような感覚だ。やまなければいいのに、なんて怒られてしまいそうな願い事をしながらみた夢は、実はあまりよく覚えていない。ただ重低音のよう…

2015-04-20

雨、ときどき曇り。 決められた時間に起きて、決められた時間に寝るような生活が始まって十数日が過ぎたことになる。 昨日、一昨日と、母と祖母がこちらを訪ねてきた。祖母は「これがきっと最後だから」なんて痩せすぎた体で言う。そんなことないでしょうに…

2014-01-31 21:41

3年前の自分は、果たして自分だったのだろうか。 そんなことを考えていて、薄ら寒い思いをした。 困ったことに、そのことを証明できるものはなにもないのだ。ただ在るのは、あやふやなこの身体だけだ。 3年前の自分は、この場所にいることを予想さえしてい…

2014-01-27 20:59

土曜日の夜には雨が降った。 昨日の日中はどこか春を感じさせる暖かい陽射しと、夜の雨を匂わせる少しやわらかい風が強く吹き付けていた。 いつの間に4月になったのかと部屋にあるカレンダーを確認してしまったほどだ。 中学の頃から使っている万年カレンダ…

2014-01-23 21:04

「十七年近く、生きてきた。物語にはいっぱいあった。世界が崩壊してしまう話。世界が崩壊した後の話。だけどどうして物語って世界が一気に壊れてしまうのかな。今日の後の明日って突然に壊れてしまうのかな。現実にはそんなことはない。現実はもっとひどい…

2014-01-06 23:29

明日も、明後日も続いてゆく。 昨日も、一昨日も確かに既に重ねてきたのだから。 この時期にいつも体調を大きく崩してしまって泣きたくなるけれど、そんなところさえ変わらずで、へへへ、と笑う。仕方がなくて、可笑しくて。 本当は走り出さないと間に合わな…

2013-12-24 06:17

偶然、ほんとうに偶然(だって目覚まし時計をかけ忘れたんだ)、早く目が覚めて、ほんとうに偶然に外へ歩き出す(だって外は寒いのにどうして出る気になれたの?)。 瞬間、呼吸を忘れた。 午前5時過ぎ、月は丁度南の空にでていて、東の空からは夏の星座たち…

2013-12-18 20:51

15日は松本へ。 行く道でみた山々はうっすら雪化粧。頬にはほんのり赤みが差して、 冬の中にある毅然とした美しさを思う。 急に決まった対談で、準備のために1週間ほどしか期間がなくいろいろと不安はあったのだけれど元々その方の著作を拝読していたので思…

2013-12-14 22:42

気がつけば一日、殆ど外に出ることもなく終えてしまった。 朝起きるとその寒さに布団から起き上がることが躊躇われ、それでも えいやっと起きて、土曜朝恒例のお掃除。 動いているうちに体が温まって、あれも、これも、と普段あまり手をつけない場所まで掃除…

2013-12-10 21:45

「私たちのために本当に幸福だつたと最後に言はれたら、その瞬間からその生き残ったものたちはこの世に幸福といふものがあるのだといふことを信づるような気になると見えますね」 堀辰雄の妻、矢野綾子氏の死の直前の言葉と、それを受け取った堀辰雄氏の心情…

2013-11-16 15:53

新幹線がでる数時間前に家を出た。 少し、町を歩いておきたかったから。 この県で一番おおきな駅で降りると、休日にも関わらず 人はまばらで、そのあまりの少なさに不安になったりもするのだけれど これからもどうにかこのままであって欲しいと願う自分がい…

2013-11-13 23:16

ガタン、がたん。 がたん、ガタン。 東北の電車の独特のリズムで揺れる。 この音に揺られると、懐かしさが蘇る。 電車の中で話す人は誰もいない。電車の音だけが響く。 自動改札なんてない、車掌さんが切符を回収する駅で降りて、 形ばかりの駅舎を抜ける。 …

2013-11-12 22:20

「もしもこの世界でやっていけないなら、自分で自分の世界を作ってしまうことよ」 大好きな本の一節。そのお話は、世界でやっていけない少女が自分の世界を見つけるまでのお話。 壊れて、壊されて、それでも自分が語るべき物語を見つけるお話。 随分と長い間…

2013-11-11 22:16

一度結んだ縁は失われることはないけれど、 遠退くことならあるのだろう。 「明後日まで冬の寒さが続くでしょう。」 ぼんやりした頭で聞いたこの言葉は果たして夢の中か、現実か。 早朝にベランダに出てみるとその寒さに身を竦めた。 夜の空気は澄んでいて、…

2013-11-08 17:39

朝目覚めると、何とか動けるほどになっていて、 ああ、今日は実験があったのだ、とよろよろとその身体を動かす。 少し進んではやすんで、少し進んではやすんで そんな歩調で一日を過ごす。 信号待ちのとき、隣りに立っていたご老人がふと屈んだかと思えば 手…

2013-11-08 00:49

早く寝ようとしたのだけれど、 咳が酷くて上手く眠れずにいる。 いつだって眠るのは下手だけれど、こんな時ばかりは少しそれが恨めしくも感じる。 それならば、と思ってPCを立ち上げてみると嬉しい置き手紙にこころが和らいだ。 市販の薬を飲むことができな…

2013-11-07 17:17

何となく、熱があるような気がして少し早めに家へ戻る。 やることの期限は大きくは年単位で定められているので、こういうときに時間の自由がきくのはとても助かる。 熱を測ると案の定微熱だった。 これからまた上がるのだろうか、下がるのだろうか。 そんな…

2013-11-04 18:11

学校の裏手に、 15メートルくらいの高さの塔がある。 もしかしたら25メートルくらいあるかもしれないけれど、つまりはそれくらいだ。 その塔は全体を明るい茶色で塗られていて、表面は波打つように凹凸があって、 それでいて窓がない。 いつか昇ってみたい。…

2013-11-02 22:12

喫茶店がある一帯で秋祭りがあるから、とマスターに誘われて喫茶店の臨時店員をしていた。 なんてことはない、注文を取って、自分で作れるものは作って、作れないものはマスターに放り投げて、運んで、お会計をする。それだけだ。 それ以外の時間はカウンタ…

2013-10-29 21:06

先を見れば果てしない道のりが広がっていて、引き返すことも、先に進むことも、いずれも目眩を起こしてしまいそうな場所に立っている。 それでも、先を想像して、それがずっと続くことを思えるようになった。 それが良いことなのか、当たり前のことなのか、…