2017-11-15

へえ、本を読むのがすきなんですね、ビジネス書とか?なんて聞かれて私は曖昧に笑う。あんまり読まないです、読めないんですと、言ったような気もする。 ここはそういう場所なのだということを思い知ったというか、知っていたことを目の前に突きつけられたよ…

2017-10-11(言葉による存在許容)

タイに行った。タイに行くにあたって「なんでタイ?」と10,000回は聞かれて10,000回は「なんとなく」って答えた。気の利いたこととは言えない。何となくというのは本当で、ほんとうになんとなくなのだ。ずっと昔に私の家族が住んでいたことがあるとか、そう…

2017-8-31

夕暮れ時、空はまだ赤くなくて、白に近いような青だった。涼しい風が吹いていて、建物と建物の間、銭湯の煙突の先には月がでていた。半分と少しの月。夏の終わりの歌をくちずさみながら、歩いてみる。手は空気を指揮するようにゆれる。楽しい方はあっちかな…

2017-8-16

とぎれ、とぎれの、記憶を思い出したいのに、夏の風がひとつ、吹くたびにわすれていってしまうよな、そんな不安にかられる。朝も、夕も、季節も関係なくすすむ時間の中で、覚えている記憶の断片だけをなぞりながら夜を過ごす。指を一つひとつ折りながら、あ…

2017-8-9

上京してよかったなあ、と思ったことがひとつあって 新宿でレイトショーを見て、そうしたらもう終電とかも終わっちゃっていて だから映画を見たふわふわした頭で、ゆっくり30分くらいかけて家まで歩くんです。 それが楽しい。もう本当に、最高に。

2017-8-8

トリエステ、という響きが特別なものになったのは5年ほど前だっただろうか。教育実習に向かう、開けた野の中を走る電車の先頭車両、その運転席に一番近い場所に立って須賀敦子の『トリエステの坂道』を読んでいた。 その頃、私は日本に帰国したばかりで、日…

2017-8-6(携帯電話を置いて外を歩く)

ここ数日、比較的涼しく過ごしやすかったものの昨日くらいからまた夏が盛り返し、かつて訪れたことのある土地では40度近くまで気温が上がったとも聞いた。 夏が嫌いで、動きが鈍くなり、エアコンをつければ体調を崩し、布団に入ろうにもどうにも暑い。外に出…

2017-8-4

何年ものあいだ、ノアには物が、いろんな物が見えた。幻覚が見え、起きているあいだも夢を見た。いまでは、語るに足るようなものが見えるとしても、たいていの人と同じで眠っているあいだに見るだけだが、前は長年、はっきり目ざめているあいだにいろいろ興…

2017-7-27(人間の(あなたの)ことだけを考えていたい)

生きることの才能がほとほと欠如していて、道もうまく歩けなければ、空気を読みすぎては頬の筋肉を痙攣させて、手は震え、そうして夜一人になっては自己嫌悪が募るばかりだ。 「何お話でしょう?」彼女は尋ねた。「運命について」彼女は眉間に小さなしわを寄…

2017-7-13

何になりたいのか、とそう問われて、いくつかの考えが頭の中に浮かんだ。その考えを全部つかまえて、大きな2つの袋に分けたとしたら、わたしはまだ何かになれるのだということと、つくるひとでありたいということの2つにわけられるのだろうと思う。 でもその…

2017-7-6

花火が上がる、ゆめをみた、ような気がする。 それは電車のなかでみた広告だったかもしれない。記憶は曖昧で不確かだ。遠く、音が聞こえる。花が咲いて、遅れて音が届く。 一番に思い出される花火は、横浜にいた時にみた花火で、それはなんでもない団地の隙…

2017-7-3

本当のことはいらないという。本当のことは大抵都合が悪く、誰かの気分を害することになるから、そんなものを表沙汰にするよりかは、本当のことの一部を切り取って貼り付けて、都合のいいことを述べろ、と。 それは、ある意味正しくて、社会のマイナス面を見…

2017-6-15

「あなたはなにかになりたかったのね」そう言われたのは夢の中だったか、それとも現実だったのか、もう覚えていない。どちらでもよかった。夢の中でも、現実の中でも。夢も現実もそこでの実態は曖昧だ。 どこであっても、私は何かではない。 川沿いを歩いた…

2017/4/17

いくつかの意味のあった日付は、それは昔のことで、今となってはその意味を失って日常の中の過ぎていくひとつのいちにちに変わっていく。 そのことを淋しいとは思わないし、ある意味正常なことなのだろうと思う。そうして長い時間をかけて葬送されたそれは、…

2017-02-01

防犯シャッターなんて閉めたくなくて、夜はできるだけずっと外を見ていたい。 じっと、何も動くものはなくて、ただ虚空の一点だけを見つめている時間が好きで、数年前まではよくやっていた。京都にいるときにその時間を失って、そうしていまもそのままだ。 …

2017-01-19

今年の抱負はと聞かれて、そんなの立てたことないんだけどなあ、と困りつつ、まあでも、ああ、そうだなあ、と「目の前に立ちはだかるもの全部倒すこと」だと答えた。 それは、計画的なものではなく、一種衝動のようなものなのだけれど。 私が好き勝手言って…

盲目の一団が、天井を仰いで

盲目の一団が、天井を仰いで、案内役の声に耳を傾ける。果物があしらわれた照明が視線の先にある。彼らが視るとはどういうことなのだろう、とぼんやりと外に目をやりながら、私は聞くともなくその説明を聞く。一つひとつ、丁寧に案内役が目に見えるものを挙…

2016-12-07

バースデーイブ。 誰よりもはやいお祝いは灯台の光。 目まぐるしく状況は移り変わって留まることを許してはくれない。塩一トンの読書もできないままに日々は過ぎて、手を伸ばす先からするりと言葉はこぼれ落ちて、いつかこの手には何もなくなってしまうので…

2016-11-26

TOPミュージアムへ、東京・TOKYO展を観に行く。 「東京のイメージは様々で、人によって違う」というのが冒頭の説明で、たしかに私のなかのイメージもとても曖昧なものだ。 東京タワーやスカイツリー、築地やスクランブル交差点、満員電車、電気街、銀座の百…

2016-11-5

久々にFBを開いたら、数日前に従姉妹からメッセージが入っていた。 交流を持つのは10年ぶりだろうか。不思議と会ってみたいような気がして「今日会わない?」と誘っていた。私も、あの子も今は東京にいた。私は東京にいたことを隠していた(と言うよりあまり…

2016-10-23

父から何年ぶりかに連絡があったのが一週間と少し前。それには一言だけの返信をした。 なんだかとても仲が悪いみたいだけれど、実際会ったところで多分喧嘩とか、罵倒の言葉を吐いたりだとかそういうことはしないと思う。できない、といった方が正しいのかも…

2016-10-6

地球みたいな空、と夜道を歩きながら思った。意味がわからなくてひとりで笑った。言葉は脈絡もなく頭のなかに降ってきて(湧いてこない、降ってくる、流れ星じゃない、たぶん椿が落ちる感じ)、あとからその意味を考えたりする。 雲の作る斑が、まあるく見え…

きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ。そう心のどこかで思いつづけ、完璧な靴に出会わなかった不幸をかこちながら、私はこれまで生きてきたような気がする。行きたいところ、行くべきところぜんぶにじぶんが行っていない…

2016-09-28

先生、善く生きるとはどういうことですか? 先生。 私の目に、涙が浮かんだ。 善く生きるとは、 どういうことですか? 私はその文字を、見つめた。自分がここで座っていることが、怖くなった。こんなところで、今、なにをしているのか。 (柴崎友香『ビリジ…

2016-09-27

「自分の人生が行き詰まってるからって、他人も世界も一緒にすんなよ。巻き添えにはならへんからな」 夕刊紙を読んでいたおっさんには、なんの反応もなかった。 ジャニスが目を開けているのに気づいた。わたしは言った。 「善く生きる、って……」 ジャニスは…

2016-09-26

ひと駅分、歩くことにしている。 光が通り過ぎていく道で、手を後ろに組みながら、通り過ぎていく人たちを眺めて、きらきらとひかる街を眺めて歩くことはとても楽しい。 歩く速度で思考する。流れる曲のこと、今朝読んだ文章のこと、少しだけ昔のこと、ある…

遠くから楽しそうなあなた達を見ているのは大好きだけれど。 大好きだから、一歩だけさがって後ろから話を聞いている。

2016-08-24

在来線と、新幹線で1時間半ほど。軽井沢がこんなに近いとは知らなかった。何も予定は決めていない。ただ、どこかに行きたくて、まあ、できれば涼しいところがよくて、くらいの浅い思考で行き先を決めた。 駅を出ると深い霧に包まれていた。数m先さえよく見…

2016-08-22

何年ぶりかに、関東に台風が上陸したという。 ビルの中に閉じこもっている間に、それは通りすぎてしまったけれど。まだを打ち付ける雨粒がうるさかった。だれもその音を気にしていなかった。キーボードをたたく音に次第にそれは混じっていった。 18時過ぎに…

2016-08-07

夜、賑やかな音楽が聞こえた。光は水面を揺れていた。 ほんとうに美しいと思ったのなら言葉を重ねる必要なんてどこにもないのだと言った。同じ景色を見ているのだから、表情でも、声音でも、この瞬間が好きなことを理解してもらえる、その感情に嘘はないのだ…